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「ただいまあ」
気分のせいか、いつもよりも余計に重たく感じる玄関ドア。
開けた先に広がる予想通りの光景。
泥だらけの外靴が乱雑に脱ぎ捨てられ、置きっぱなしのランドセルと体操服入れ。
リビングに続く廊下が汚いのは靴下も汚れているからだろう。
怒りを抑えつけて開けたリビングのドア、私のただいまにも反応しない陽斗が何をしていたかというと。
「あ、姉ちゃん! 腹減っちゃったよ」
見つからないように片づけておいたお菓子を食べながら、ソファーにあぐらをかいてテレビを見ていた。
おかえり、ではなく、腹減っちゃった。
自分の欲求ばかり伝えてくる小学三年生男子。
「宿題は?」
「あ」
てへへ、とごまかすように笑って玄関に向かおうとする陽斗の腕を引き止めた。
「宿題は? 体操服は洗わないの? 洗うの? ランドセルの置き場所って、あそこであってる? お風呂掃除は終わった? で、絵の具のある日に白い服着るなって、姉ちゃん何回言ったと思ってんの?!」
「……、ごめんなさ~い、すぐやります」
一応反省の色を覗かせながら、チラリと視線を私から外してテレビを見た陽斗。無言で圧をかけるようにテレビのリモコンに手を伸ばしオフにした瞬間、ちっちゃな舌打ちが聞こえた。
「陽斗、なんなの? その態度!」
今日の怒りが噴出して怒鳴る私から逃げるように、慌てて陽斗は言われたことをやり始める。
……、誰のせいで私がこんな早い時間からご飯の支度やら、絵の具や泥で汚れた服を手洗いしなきゃならないと思ってるのよ!
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