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陽斗の母が亡くなったのは二か月前だ。
2歳の時、生みの母を事故で亡くした私の前に『新しいお母さん』が現れたのは、10年前、今の陽斗と同じ年齢だった。
『はじめまして、亜子ちゃん』
微笑んだ顔が優しそうだなって思った。
実際に母は本当に良くできた人で、陽斗も私のことも分け隔てなく可愛がってくれていたと思う。
父と私の二人暮らしの時。父は日中定時で上がれる仕事をし何とか私を育ててくれたけれども。
再婚してからは家族を養うために夜勤もある仕事に変わり、マイホームを買った。
それからすぐに陽斗が生まれ、家の中は騒がしくなる。
母と父の笑顔、陽斗の笑い声に溢れた日々、思えばその頃が一番幸せだった。
働き者だった母は、陽斗を二歳から保育園に入れて働いていた。
家のローンの足しにしたり、将来私が大学に行くためにと貯蓄まで。
私と母に血縁がないだけで、傍目には幸せな家族として映っていたと思うし、実際その通りだった。
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