27人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
「……機嫌が悪いのは、あなたの方ではありませんの? エド」
群がっていたひとたちが去ってから、わたしは彼の顔を見ずにそう言った。
「そうかもしれないね。では教えてくれるかな、どうして私が贈ったドレスを着てくれていないのか」
「あなたの趣味を、わたしに押しつけてくるからよ。まだ正式な関係じゃないのに、まだあなたの色に染まりたくないわ」
「きみの意見を尊重するよ、ゾーイ。まだ婚姻関係を結んでいなかったのに、私が急ぎすぎたようだね」
「お心遣い、感謝いたしますわ」
やばい。
笑顔の仮面が剥がれそう。
扇子みたいな羽のついた扇で、今すぐ顔を隠したい。
妹に続いて兄まで問うてくるか。同じ質問を。
しかも、案外簡単に引き下がるのね。やっぱり、特別な力として聞いたあのことが理由なのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!