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「……どうした? やはり明日は急だったか?」
「いえ、お父様。陛下からのお望みを、わたしが断れるはずなどありませんわ。それに、ご足労いただいたお父様にも、申し訳が立ちませんもの」
「そうか。ゾーイならそう言ってくれると思ったよ。ではさっそく、明日に」
「このことは、エドは……」
「もちろん。問題ない、彼もご存知で、いらっしゃる予定だ」
「かしこまりました。ではまた明日に、ごきげんよう、お父様」
クリストフに挨拶し、わたしは自室へと戻る。
どうすべきか悩んでいた道が思わぬ形で拓けた。
これがうまくいけば、きっとわたしは元の世界に戻れるはず。こんなにうれしいことはない。
「うれしそうですね、お嬢様」
お茶を淹れながら、侍女が微笑み言う。
「……えぇ、そうね」
「最近、お稽古以外にも来客続きで忙しかったですものね。クリストフさまにお会いできてよかったですね」
「そうね……お父様も、そう思ってくれているといいのだけれど」
「もちろんですよ! お嬢様をだれよりも愛しなさっているのはクリストフさまですから!」
「ありがとう。元気が出たわ」
無邪気に笑ってくれる侍女の姿が、これ以上なくわたしの胸を痛めた。
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