王様を知る人

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王様を知る人

「王様は元気?」 そう聞いてきたのは私が事務員として働く高校の先生だった。 女性で歳が近いこともあり、顔を合わせれば、お喋りをする程度には仲がいい。 「元気ですよ」 「そう。よかったわ」 王様を私に紹介したのはこの人で、『きっと気が合うと思うの』なんて言ってこられると、単純な私なんか『そうかもしれない』とあっさり思い込み、深く考えず、王様の身柄を引き受けてしまった。 「よくないですよ!遠慮のかけらもない上に私の領土を脅かします」 「りょ、領土!?」 「私が座ろうと思ったソファーで、伸びて寝ているし、一万円のクッションは奪われ、今日の朝、食べようと思っていたツナとコーンのパンが強奪されました!」 ううっと涙ながらに語った。 私の朝食があああー!!! 昨日の帰りにコンビニで買ったパンで楽しみにしていたというのにこの仕打ち。 酷すぎる。 思い出しただけでも腹が立つ。 あの暴君め!恐ろしいほどの傲慢さと不遜さで食べた後、ドヤ顔をしていた。 『食べてやった』それくらいの気持ちでいるのだろう。 「王様にご飯をあげてないわけじゃないんです。庶民のごはんでは満足できず、『こんなものを食わす気か?貴様は』って感じの態度をとられて、食べないんですよ!」 「そうね。前の暮らしぶりを考えたら、そうなるかもしれないわね」 以前はそれこそ大事に扱われ、最高級ベッドに眠り、高級な食事におやつ、余りある愛情を皆から注がれた。 「王様にはもう庶民だということをわかってもらわなくてはなりませんっ!辛いことですが」 「そうね」 「でないと、うちの家計が破産します」 それか、私の給料をいくらか(かす)めとられてしまうか。 すでに私は王様にこれでもかというくらい尽くしているというのに!! 「なんだか、悪いわね」 「いえ、王様のことは嫌いじゃありませんから」 嫌いになんか、なれない。 我ながら、なんて報われない愛だと思う―――
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