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触れてはならぬ
仕事が休みの日は雑誌を読み、ゴロゴロしながら推しのコンサート映像を堪能するのが、最高の休日と言えよう。
推しのカッコよさを再確認し、今日も推しは私を癒してくれた。
誰もリビングにいないのをいいことにふんふんと歌いながら、ペンライトをふりながら、ノリノリだった私―――イケメン、イケメンですよ、これは。
手足をばたばたさせて、推しのイケメンぶりにニヤニヤしていると視線を感じた。
ハッとして、その視線の方向を見ると、王様が『こいつ、何やってるんだ』という顔で私を見ていた。
「な、なんだよっー!なんか文句あるわけ?」
「別に」
ふいっと顔を背ける。
おやおや?
もしや、嫉妬かな?
可愛い奴め。
「ほーら。王様、こっちにおいでー?」
優しい声で呼ぶと、王様はぴくりと僅かに顔の表情を変えて私を見た。
ふふふ……容易いのう。
どうやら、大好きな私には敵わないようね?
ほらっと手を伸ばし、近づいてきた王様に触れようとすると、サッと避けられた。
おい、なんでだよ?
「気安く触るな、この下っ端風情が」
「誰が下っ端だ!王様、素直になりなよっ!」
「十分、素直だ」
高貴な俺とでも言わんばかりに距離をとられてしまった。
しかも、気のせいじゃなかったら、私を蔑んだ目で見てない?
なんとなく、気まずくなり、推しの雑誌をそっと閉じた……。
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