いつも特別なものを

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いつも特別なものを

推しの雑誌を置くと、コーヒーでも飲もうと立ち上がった。 何故か王様まで立ち上がり、キッチンについてくる。 そして、偉そうな態度をとった。 「俺にもうまいものを与えるがいい!」 「……はいはい」 そう言うと思ったよ。 お願いの仕方があるでしょうがと思ったけど、私も人がいい。 なんかあったかなーとおやつを探した。 一昨日開けたおやつがあった。 ちょっと乾いてるけど、これでいいやと王様にぽんっと渡すと不機嫌な顔をされた。 「それじゃない」 「いや、これ食べなよ」 「嫌だ」 うぬぬぬ! 反抗期か? プイッと知らん顔をして、おやつを渡すとコーヒーを手に自分の定位置であるソファーに戻った。 ―――視線を感じる。 ちらりと王様を見ると、(かたく)なに食べようとしない。 なぜ、私をにらんでる!? 「ちょっと王様。それでいいでしょ!?他のおやつはないんだってば!私は買いに行かないよ!」 「俺は知ってる。冷蔵庫に俺の好物があることを!」 「王様のじゃないし」 「だれのだ!」 「我が家のお父上の分だよ」 「むう……。しかし、きっと許してくれるに違いない」 なにそのポジティブさ。 許してくれること前提で食べるの? なんて奴だよ! あげられるか! そう思って、無視していると王様はしつこく冷蔵庫の前から動かない。 ―――動かざること山の如し。 そんな声が王様の背中から伝わってくる。 なんの根比べだよ。 戦国武将かよ。 冷蔵庫をじぃっと見つめている。 じりじりとした圧が私の心臓にかかり、読んでいた雑誌を置いた。 「仕方ないわね!」 結局、負けるのはいつもこっちの方なのだ。 王様はちゃっかり自分の欲しい物を手に入れて、得意顔だった。 「最初からこうすれば、よかっただろう。しょせん、無駄なあがきよ!」 腹が立つことに偉そうな態度で、王様はそんなことを言った。 この贅沢ものめ! おとなしく乾いたおやつでも食べてなよ! そして、父よ、すまない。 父の夕飯のおかずが減ってしまったよ―――王様のせいで。
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