アルド

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何時間くらい歩いただろうか。 いや、実はそんなに時間は経ってないのかもしれない でも脹脛は痛く、だんだん太腿が上がらなくなってきた 昨日スライムと一緒に煙となった為、靴を履いていない右足がとくに痛む。   「少し休憩だな」 振り返ったアルドが満身創痍な俺を見てそう言った。 薄暗い森の中をやっとの思いで抜けると、目の前に聳え立つ断崖 アルドが言うには、あとはこの断崖沿いに南へと歩き、もう一つ森を抜ければ町へと続く道へと出るらしい、ちょうど行程の半分くらいだと。  あともう半分…気が遠くなりそうだ 断崖を背に、ゆっくりと座り込み両足を投げ出す。靴を履いてない足が酷く痛みはするものの、出血などは今のところ見られない 森を歩いてる間、モンスターに襲われたりもせず、無事にここまでやってこれた。あと半分もどうか何事もないまま、町へと辿り着きたいものだ。 「…肉が食いたい」 「わかる!」 小さく息を吐いたアルドがボソリと呟いた言葉に、思わず反応してしまう その気持ち、すごく分かるのだ 今すぐエネルギーへとなりそうかつ、テンション上がる事間違いなしの肉が食べたい。 少し食い気味に返事をした俺をアルドは面白そうに笑い、それならば、と徐に黒いマントを脱いだ。何故なのか。 「ちょっと一狩り行ってくる」 え?まって? 脱いだマントを座り込む俺の足の上へと投げたアルドがニヤリと笑った。 本当にちょっとそこまで買い物に。みたいなテンションで言われて、思考回路が一時停止した。 うん、待って。そして何故脱いだ こんな場所に1人置いていかれるのは勿論ごめんだし、かと言って狩りについて行くなんてもっとごめんだ。そんな危険いらない、お肉のためと言えども、そこは譲れない 「だめだめ!そんな!危ない!だめ!」 思考回路が上手く回らず、語彙力なさすぎるだろう。と自分でも呆れる言葉でアルドを引き止める 「トーヤはここで待ってろ」 うん!もちろん行く気なんて微塵もないよ!ないけれど!置いていかれる気もないからね?! もし1人の時に昨夜みたいなモンスターに襲われでもしたら…と悪寒が走る 「一人で待つとか無理!俺、戦えないよ?超弱いよ?!一撃で死ぬよ!!!」 縋る様にアルドを見つめて必死に止める。 俺まだレベル1だから、本当に何か出てきたら一撃で死ぬ、本当に死ぬ 「分かってる。だからそのミスリル糸のマントと、仕上げにこの…香水だ」 と、腰にぶら下げた小さな革製のポーチから小さな小瓶を出したアルドはその中身を俺へと振りかけた 「モンスター除けの香だ。それとそのマントがあれば……………まあ大丈夫だ問題ない」 え、待って?その間は何?本当に大丈夫なの?! 全然信用できない!!モンスター除けの香水ってなに!何の匂いもしないけど? 絶対嫌だよ?そこまでして肉欲しくないよ!確かに食い気味で返事したけど、この状況ではまた話が変わってくる! 嫌だ、行かないで!と腕を掴もうと俺が立ち上がるより先に、上半身裸のままアルドは颯爽と、森の中へと消えていってしまった。 え、早すぎ ていうか、裸だったけど…あんな格好で森に入って大丈夫なのだろうか 揚々と進んでいったのだから大丈夫なのかもしれないけれど、さすがに少し心配だ。 いやいや、アルドの心配もだけれど、俺も大丈夫なのだろうか。 とりあえず貰ったマントを羽織り出来るだけ全身を隙間なくマントで覆ってみた 全然大丈夫な気がしない でも行ってしまったものはもう仕方なくて、勿論追い掛けるなんて選択肢はないわけで そうだ!買い物をしよう! せっかくだ、アルドに見られていない今のうちにある程度買っておこう。 断崖に背中を預けてノギノ商店を開き、暫く画面と睨めっこ 水分と、乾き物を幾つか、それとラーメン。これは外せないな。あとは…菓子パンがあるからこれも。ミックスナッツ!これも良さそう。 ポチポチと目ぼしいものを一通り購入して、一息吐きながら乾いた喉にお茶を流し込んだ。 食事はアルドが戻って来てからにしよう それにしても、どれくらい経っただろうか 早く戻ってこないかな… 鬱蒼と茂る森から葉が揺れる音がするのだが、その音が何とも恐怖を煽る。 恐怖心を払う様に頭を数回振り、大きく深呼吸をした時だった、ポツリと頬に冷たい感触。 雨だ… とうとう降り出して来た。 ぽつり、ぽつり、と降っていた雨は次第に強くなり、空を覆っていた灰色の雲もそれに応えるかのように厚さを増して行く そこでふと、不安が過った モンスター除けの香水、雨で流れ落ちてしまうのでは? そう思うと森の葉に落ちる雨粒の音ですら怖くなり、雨のせいなのか、恐怖のせいなのか、身体が冷え指先が震える どうしよう…と周りを見渡すと少し先の断崖に窪みがあるのが見えた もしかして?と急足でその場まで向かうと、そこには小さな穴。小さな洞窟が口をぽっかり開けていた。 奥は暗くて、見えない所へと繋がっていそうで少し入るのを躊躇ったが、いつまでも雨にうたれていれば香水が流れ落ちてしまうのも心配で、入口ギリギリの1番手前の所なら大丈夫だろう!と自分に言い聞かせて、洞窟へと足を踏み入れる 中はとても静かで、壁はゴツゴツとした岩肌に、足元には柔らかい苔が敷き詰められていた こんなに雨が降ってる中…アルドは大丈夫だろうか。俺にマントを渡したから上半身裸だし、きっと寒いだろうな……。 と未だに戻ってこないアルドの心配をしながら、外の景色を眺めていると、背後で微かに物音がした
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