日常

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日常

あぁ、ヤバいな。 もう定期テスト3日前なのに全く勉強できてない。夏休みが明けてすぐにするテストだ。 高校に上がってから勉強が格段に難しくなったと思うのは僕だけだろうか。 課題の量や授業の数が増え、内容もより細かく掘り下げるようになった。 両親は高学歴で父さんは大手建築会社の社長をやっている。 地元ではみんな知っている水瀬(みなせ)電工って会社。 母さんは研究所で新薬の研究をしている。 きっと今まで開発してきた薬で多くの人を救ったのだろう。 僕らが住んでいる地域は、俗に言う田舎。 大きなビルなんてそうそうない。学校や家の周りにあるのは田んぼや民家がほとんど。 家から徒歩でスタダ(スターダストコーヒーの略称)に行けるなんて都市伝説だ。 バスや電車の便も悪く、だいたいの大人たちは車を使って移動している。 で、僕はと言うと普通の高校生。ホントに普通。 偏差値52くらいの良くも悪くもない吉波(よしなみ)高校に通っている。 白い半袖のポロシャツにグレーのチェック柄のズボンとスカート。 偏差値普通の高校、特に個性のない普通の制服。そして、その高校の真ん中くらいの順位にいる普通の中の普通の僕。 学歴が全てじゃないと思っているし両親も僕にしつこく勉強しろと言ってくる訳でもないんだけど...。 無言で “これで君も神童に! 無敵の力を手に入れて周りの学生を蹂躙(じゅうりん)せよ! ゴッドゼミ(通称ゴゼミ)” を毎週、部屋の机の上に置かれていたら負い目を感じる。 まぁ、これのお陰で中学のときはかなり良い成績を取れたから感謝はしているけど。 「いいか? どんななぁ小さなことでも良い。どんなになぁ大げさでもなぁ馬鹿げていることでも良い。とにかくなぁ夢や目標を持つことが大事」 今は帰りのホームルーム。 スラッと背が高く、常に背筋を伸ばしている姿勢の良いこの人は辻本(つじもと)先生。 めちゃくちゃ情に厚くて学生想いな良い先生なんだけど文節ごとに“な”をつけてくる。 この人のお陰で言葉の単位の“文章・段落・文・文節・単語”は一発で覚えた。
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