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クラスはざわついている。
冗談だと思って笑っている人。
真に受けて少し不安になっている人。
半々くらいだろうか。
辻本「文月め。ハッキングしやがったな! まぁなぁ授業中じゃなかったからなぁ、あまりキツくは言わんけどなぁ、ハッキングは犯罪だからなぁ、また後日なぁ、ちょっと指導するなぁ」
「ぎぃゃああああああぁぁぁぁぁ!」
トイレの方向から聞こえてきた叫び声に先生の声が掻き消される。
樹神…? 何があった。
あまりに大きい断末魔だったので教室にいた生徒全員が廊下へ飛びだした。
すると、そこにいたのは2メートルほどある大きな黒い人型の物体。樹神はそれに髪を掴まれてもがいている。
そして、後ろから同じようなものが複数体、こちらに向かって来ているのが見えた。
樹神「デカいゴキブリイィィィィ~! 虫きらーい!」
樹神、それは虫じゃない。
慶の言っていた“鬼”だ。
僕も含めて、全員逃げ出した。あの放送の内容が全て本当だったと悟って。
ただ1人、辻本先生だけは樹神を助けようと立ち向かっていった。
辻本「お前ら! 樹神くんを放せ!」
樹神「必殺! アフロブレイク! アフロブレェェェェイク!!!」
背後から大きな声が聞こえてくる。かなり離れたはずなのに耳元で叫んでいるかのような大きな声。
樹神、僕は君のこと面白くない奴だと思っていたけど撤回するよ。
君は死ぬ間際までエンターテイナーだったんだ。
いや、人質って言ってたから死なないかもしれないけど。
………ダメだ。笑いが込み上げてくる。恐怖と笑いの感情が相まって足がガクガクと震える。
笑うな。走れ! 逃げ切らないと殺されるかもしれないんだ!
樹神の最期のボケを聞いた大半の人は笑ったせいで転んでしまい、捕まってしまった。
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