843人が本棚に入れています
本棚に追加
/1213ページ
ドオオオォォォォン!!
次の瞬間、我の視界は彼から空に移り変わっていた。
どうなっている? また視えなかったのか? 先程と同様、遅れて痛みが襲ってくる。
今度は叩きつけられた身体全体と顔面への猛烈な痛み。
理解した…。奴は我の顔面に渾身のストレートを打ち込んだのだ。
身の程をわきまえろ。人間如きが神の顔を傷つけることなどあってはならない。
万能たる故にしばらく感じることがなかった久しい感情、これは……“怒り”。
怒りが腹の底から沸々とこみ上げてくる。
懐かしい感情と感覚、この片時に2つも感じることになろうとは…。
「ウガアアアァァァァァァァァ!!」
更なる追撃をかけようと耳が張り裂けるほどの咆哮を上げながらこちらに向かってくる。
人間如きに神の力を二度も使うのは癪だが、正面からの打ち合いでは分が悪い。
我は身体を起こし、今度は天に掲げるのでなく奴に向けて指を鳴らした。
次の瞬間、奴の動きはぴたりと止まる。そう、これは“時間制御”。
どんなに肉体が強靭であろうが時間を止めてしまえば関係ない。
これが人間の限界。神との絶対に縮まることのない差。
人である限り、時の流れを超えて活動することは不可能なのだ。
さて、奴を始末するのはいつでもできる。どう始末をするのかは我の顔の傷つき具合で決めるとしよう。
大した傷でないのなら楽に死なせてやる。
だが、場合によっては死んだほうがマシだと思うほどの苦しみを味わいながら、ゆっくりと死んでもらう。
さぁ、審議の時間だ。
「出でよ、神の手鏡」
最初のコメントを投稿しよう!