うちにへびがいます

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『それが何故かは誰ももう判らないのですが、とても小さい卵がそこにあったのです。ある日誰も知らない時に小さい卵が割れました。小さい卵の中にいた小さい命が割ったのです。小さい卵はいつからそこにあったかが判らないから、小さい命もいつからそこにいたかはわからない。でも今お腹が空いて空いてたまらなくなって、一生懸命狭い中で動いてみたら殻が割れて世界は急に広がりました。けれど世界は広がるだけで全然親切ではありません。お腹はやっぱり空いています。少しよく廻りをみたいと首を伸ばしてみたその時にものすごい叫び声と大きく円い濁った色の何かが降ってきました。小さな命は逃げました。隅っこを探して逃げました。隅っこに入り込んで逃げました。 これはずっとずっと後になって分かったことなのですが、叫び声はヒトという生き物のもので落とされてきたのは金属の棒。ここはヒトという生き物の世界で自分はへびという生き物だということ。 けどそのときはナニもわからない。お腹はすっかり空いたままで。隅っこの隅っこの隙間でそっと震えてました。そのとき直ぐ傍に平たい虫がいて小さいへびはその虫を食べました。ゴキブリという名前の虫でした。でもそれがわかったのは随分後のことです。小さいへびはお腹が空いたを覚えて次に逃げるを覚えて次に食べるを覚えたのです。小さいへびは逃げなくていいように隠れるも覚えました。お腹はやっぱり空いてくるので食べるを隠れながら探しました。 ヒトに見つからないように探しました。虫が割りと見つけやすいでした。ヒトは虫に関心がなくてでも虫たちはたくさん傍にいた、だからかもしれません。カタツムリは食べるができました。ナメクジも食べるができました。
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