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どうしよう・・・。
どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・!
僕は走って家にたどり着くと閉めたドアに寄りかかり、崩れるようにその場に座りこんだ。
噛まれてしまった・・・!
ずっとうなじを押えていた手を外すと、そこには血がついている。
身体中の血がそこに集中したように熱い。ドクンドクンと脈打ち、身体が小刻みに震える。
どうしよう?
どうしたらいい?
冷静になりきれない頭で考える。
アフターピルは飲んだ。
あとはシャワー・・・シャワーを浴びよう。
気がつけば中から出てきたもので下着が濡れている。
相手が眠っている間に急いで逃げてきたから、体も拭かずにそのままにしてしまっている。
僕は洗面所に行くと着ているものを全て洗濯機へ入れ、バスルームに入った。
熱いシャワーを全身に浴び、隅々まで洗う。
中に放たれたものも出さなくてはいけないのに、どうすればいいか分からない。
誰かとこういうことをしたのは初めてだった。
いつも発情期は一人で済ませていたから。
元々淡白な方でそんなに激しくなかったのもあるけど、身体を繋げようと思えるほどの人がまだいなかったためだ。
オメガだからと打算的にも悲観的にもなっていなかった。ただただ普通に、いつか自分も誰かに恋をして、結ばれるものと思っていた。それがアルファでもベータでも構わない。本当に好きになった人と、結ばれたいと思っていた。なのに・・・。
突然嗚咽が込み上げてきた。
初めての人は顔も名前も知らない、通りすがりの人だった。その上うなじまで噛まれて・・・。
勢いよく出るシャワーの下で蹲り、僕はひとしきり泣いた。なんの涙か自分でも分からない。怖いのか、悔しいのか、悲しいのか・・・分からないけど、感情に任せて泣いた。そうしなければ、心が壊れてしまいそうだったから・・・。
結局、後ろは指で広げて出てきたものを洗い流して終わった。それ以上、どうしていいか分からなかったのだ。
シャワーを終えて、僕はベッドに潜り込む。
心も身体も疲れていた。こんな状態の時にいくら考えてもいいことなんかない。眠って、眠って、それから考えよう。
僕は目を瞑ると、まるで現実から逃げるかのように眠りに落ちた。
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