お姉ちゃんはぼくを無視する

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 四歳上のお姉ちゃんはぼくを無視する。  昔は「ねーたん、ねーたん」って、ケンカに負けてぼくが泣きつくと、 「かわいい弟に何するんだぁ!」って仇討ちをしてくれたのに最近は全然かまってくれない。 「ねえ、どうして無視するの?」 「あんた成長しすぎでウザイから」 「そんなのぼくのせいじゃないよ。前みたいに遊んでよ」 「あんたさぁ、彼女でもつくったら? けっこうイケメンなんだからモテるっしょ?」 「クラスメイトとか興味ないよ。『趣味は何?』とか『お付き合いしてください!』とかバカじゃないの」 「やっぱモテんじゃん。シスコンはやめなって」  ぼくを無視する程度はだんだんひどくなって、どんなに話しかけても答えてくれなくなった。 「お姉ちゃんのバカ! ブス!」 「……。……」  参考情報だけど、お姉ちゃんはあまり成績はよくない。でも、ものすごい美少女。ぼくの同級生の男子はお姉ちゃんに踏まれたい割合が9割超え、女子は叱られたい割合が8割超えらしい。誰が調べたんだか。  お姉ちゃんは料理が得意。忙しいお母さんの代わりに晩ご飯を作ってくれる。 「何か手伝おうか?」 「……。――」  目線の方向で、お皿を並べるとか、冷蔵庫のサラダを出すとかわかる。 「おまえら、ケンカしてるのか?」  ビールを飲んでるお父さんが訊く。 「してないよ。話したくないだけ」 「ねえ、話しようよ。ぼくが悪いんだったら謝るから」 「そうだぞ。姉弟(きょうだい)でも、いつまでも一緒じゃない。学校を卒業したら離れ離れになるのがふつうだ。つまらないことでいがみ合うなよ。後悔するぞ」  お姉ちゃんは何かを言おうとして、それを呑み込んだような表情で外に行った。  ぼくは決心した。お姉ちゃんに話しかけても無駄だったら、何かすれば反応が返ってくるんじゃないか、半分悪戯心、半分本気でそう考えた。  まずはお姉ちゃんが朝、洗面所で髪を梳いている前に顔を出した。ぼくはお姉ちゃんより10㎝は背が高いから、全然見えないのに何の反応もせずに髪を梳き続け、まるで鏡が見えてるようにリップクリームを塗ってる。  なかなかやるな。朝ご飯の時に両親の目を盗んで、後ろに回って脇をこちょこちょくすぐる。かなり苦しそうだったけど、耐えてる。玄関で靴を履いてるお姉ちゃんの前にしゃがむ。パンツ見えてる。平然として出掛けた。……  休み時間にトオルが絡んで来た。 「タケルぅ、何ぼーっとしてんの?」 「あのさ、おまえオンナに無視されたことある?」 「ひどいこと訊くね。あるに決まってんじゃん。って、おまえまさか無視されてるわけ? 誰よ? え?」 「いや、誰ってことも……」  あ、教室にいるみんなが聞き耳立ててる。しんって。しんしんって。 「でさ、無視されてるのって嫌じゃない? どうしたらいいと思う?」 「なんで無視するんですか?って訊けばいいじゃん」 「それも無視されたら?」 「無視できなくなるようなことをしてみれば?」  ですよねー。でも、既にやってるんだけど。 「例えば?」 「うーむ、むむー。おれなら、キスしちゃうね。そんなやつは」  みんなが固唾ってのを飲んでる気がする。何を待ってる? 暇な連中だな~。 「なるほどね。参考になった」  授業開始のチャイムが鳴る。緊張した空気がほどける。  で、ぼくが今か今かと自分の部屋で待ってたら、帰って来た。隣のお姉ちゃんの部屋の前で腕を掴んでキスした。 「ん――」  抵抗しない。反応もしない。唇と唇が偶然接触しましたって感じ。腕を振り払われて部屋に入られた。  ぼくがキスしてくるって予測してたんだろうな。「ん」って声をあげさせただけ良しとすべきかも。なーんて感慨に浸ってる場合じゃない。折角鍵が掛かってないんだから、お姉ちゃんの部屋に入る。まだリボンを外しただけ。  それから、お姉ちゃんの生着替えをじっくり見せてもらった。全く無反応で、ぼくが床に寝転んで眺めたり、脱いだブラウスやスカートをくんくんしても、視線も合わせない。  ぼくは無視されて嫌われてるんだって思ってたけど、違うみたい。じゃあ、好かれてるのかっていうとそれも違ってる気がする。……お姉ちゃんはぼくに見られてる自分が好きなのかも。複雑だな。  ぼくは単純で、お姉ちゃんの着替えを見たり、脱いだ下着で覚えたてのオナニーをした。そしたらお姉ちゃんはお風呂に入る前で寒いだろうに、素っ裸でしゃがんで、 「あー、この床汚れてるなぁ。こすったら取れるかな」なんて言いながら、ぼくがシコるのを間近で見てる。 「あ、お姉ちゃん、出るよ! 飛ぶよ! 掛かっちゃうよ!」って言ってるのに顔色一つ変えずに、 「なんかヨーグルトとか食べたくなった」なんて言って、目を閉じて口を薄っすら開ける。  飛び散る温製人造ヨーグルト。 「あ、なんかおいしい気がする。くしゅん!」  お姉ちゃん、あんたホントに処女? 出来上がり過ぎでしょ。まあ、ぼくも童貞なのに一緒にお風呂に入って、歯磨きしようとしてるお姉ちゃんにお掃除フェラをさせちゃった。  そこから先は想像に難くないって思うけど、お姉ちゃんが勉強してるフリしてわざとらしく自分の机に手を突いて、お尻を上げてるのを犯して、処女を奪った。その血をティッシュで拭きながら、 「あれ? 生理まだなはずなのに」と言ったのにはドン引きして、ドン突きしてしまった。  そういう無視はずっと続いて、ぼくがゴムをはめてなくても抵抗しないし、犯されてないという設定だからピルは飲まないしで、今では三人の子がいる。だのにまだ無視する理由は教えてくれない。
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