盗み聞きですれ違い!?

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明日花視点 豊と沙彩と別れた後、明日花は朝の時間を涼太とNステの話をして盛り上がった。 自然と言えば自然だが、豊が不安を感じていた通りのことが隣のクラスでは起きていたのだ。  だが二人に他意はなくただただ好きなアイドルの話をしていただけ。 それは一限目の授業を終えても変わることはなかった。 「ねぇ、涼太! 新曲の歌詞はもう憶えたんだよね?」 「おう。 もちろん」 「忘れちゃったから教えて!」 「あぁ、いいぜ」 二人で歌詞を確認しながら口ずさんでいるとだんだん盛り上がってきた。 周りのクラスメイトにも注目する者が出てきて、ちょっとしたコンサートになりそうな具合だ。 「そう言えば、新曲を発表すると同時にカラオケにも配信されるんだってな」 「え、本当!? なら今日の放課後、早速カラオケへ行かないと!」 「それ賛成! 沙彩は今日の放課後、何も予定がないって言っていたぜ。 残りは豊だけだし、誘ってみたら?」 「うん、言ってみる!」 二人にとって四人での集まりはいつもの日常だ。 例え盛り上がっているのが二人だけでも二人だけでどこかへ出かけたりはするわけがない。 明日花は早速豊のいるクラスへと向かう。 「ねぇねぇ、豊ー!」 「おぉ、明日花か。 どうした?」 「今日の放課後、一緒にカラオケへ行かない!?」 「それは二人でか?」 「ううん。 四人でだよ?」 そう言うと豊は溜め息交じりで言った。 「また四人? 最近四人行動ばかりじゃないか。 何だよ、俺と二人きりになるのが嫌なのか?」 「え、そんなことは言っていないじゃん! どうしてそんなことを言うの? 豊はみんなのことが嫌いなの?」 「そんなわけないだろ」 「ならいいじゃん! 私はただ、昨日出た新曲を涼太と歌いたいだけなの!」 明日花の口から仲がいいとはいえ別の男の名前が出て嬉しいはずがない。 寧ろ涼太だからこそ余計モヤモヤとした気持ちになる。 「だったら涼太と二人で行けばいいじゃないか」 「豊がいないと意味がないんだよ!」 「おーい、明日花ー!」 話していると廊下から友達に声をかけられた。 「う、呼ばれた・・・」 「行ってこいよ」 「でもまだ話が」 「女友達は大切にしろ」 「・・・分かった」 豊かにそう言われ友達のもとへ行く。 だが豊があまり乗り気ではないことに後ろ髪が引かれる思いだ。 違うクラスまで探しに来る程のどんな用事かと思っていると、友達が両手の平を合わせ頭を下げた。 「明日花、お願い! 数学の教科書を忘れちゃったんだ、貸してくれない?」 「あぁ、うん。 いいよ」 わざわざここまで来る必要はないのではないかと思った。 丁度チャイムも鳴ってしまい豊と話せずに終わってしまう。 教科書を貸すとそのまま涼太のもとへ行く。  時間に余裕はないが、今の気持ちを一人で飲み込むことができなかった。 「涼太ぁー! 豊と喧嘩したぁー・・・!」 「はぁ!? 喧嘩!? 一体何があったんだよ?」 「いや、大した喧嘩ではないんだけど・・・。 豊は四人でカラオケへ行くの、反対だって」 「マジかぁ。 明日花と新曲を歌いたかったんだけどなぁ・・・」 「でしょ! だから四人で行かないと意味がないの! 豊にもそう言ったんだよ? それでも駄目だって!」 「どういう風に言い返されたんだ?」 「ううん。 話している最中に友達に呼ばれて、返事は聞けなかった・・・」 「ならまだ、行くのは完全に駄目とは決まっていないのか」 「四人で行った方が絶対に楽しいから!」 不満気な明日花を見て涼太は笑いかけた。 「明日花は本当に俺たちのことを想ってくれているんだな。 嬉しいよ」 「当たり前じゃん!」 「でもきっと豊は、明日花と二人きりになりたいんじゃないのか?」 「え、二人きりに? ・・・そ、そうなのかな・・・」 「それ程豊は、明日花のことが好きなんだよ」 「そうだったら嬉しいな・・・」 「豊が明日花のこと、嫌いになるわけがないだろ」 「・・・うん、そうだね。 あとで仲直りしてくるよ」 「おう」
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