第24話 菜々恵が突然発熱した!

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第24話 菜々恵が突然発熱した!

結婚式の日程が決まって僕はホッとしていた。結婚式まであと1か月あまりだ。でもお見合いして2か月足らずで結婚することになろうとは思いもつかなかった。 菜々恵には毎日必ず9時ごろに連絡を入れていた。菜々恵の声が聞きたかった。水曜日の夜、電話の声が少し変だ。どうしたのかと聞くと帰宅してから熱が出て、測ったら39℃あると言う。 僕は心臓が止まるかと思うほど驚いてしばらく口が利けなかった。「すぐ行くから」と言って、僕はマンションを飛び出した。 お見合してからすぐに両家の親にお互いを紹介して婚約した。次の週末には結婚式の会場を決めた。今週末には僕のマンションで新居について相談する予定だった。 菜々恵のアパートは日吉にあるというが、まだ訪ねたことがなかった。ここから電車で20分くらいあれば行ける。駅からの道順はスマホで調べたから分かる。 大丈夫であればいいが、いやな予感がする。もう何も考えられない。早くアパートに着いて菜々恵の支えになってやりたい。そういう思いばかりがつのる。 駅前にフルーツショップがまだ開いていたので、おいしそうなカットフルーツのパックとジュースを買った。これならすぐ食べられる。 菜々恵のアパートと思しき建物が見つかった。201号だから2階の端だ。表札は出ていない。部屋の前につくとドアをノックする。 「田村さん、僕だ、井上だ、大丈夫か?」 「はい、ちょっと待ってください」 菜々恵の声がした。電話よりしっかりした声なので少し安心した。ドアが開いてパジャマ姿の菜々恵が立っていた。熱のためだろうか顔が少し赤い。 「入っていい?」 「わざわざ来てくれてありがとう。どうぞ入って下さい」 部屋に通された。僕とほぼ同じつくりの小さめの1LDKだった。ただ、プレハブのアパートとマンションの違いだけで、中はほとんど同じだった。女子の部屋に初めて入った。寝室には布団が敷かれていた。 「熱があると聞いて、心配で居ても立ってもいられなくてやってきた。役に立てるかどうか分からないけど」 「ご心配をおかけしました。大丈夫です」 「大丈夫じゃない。高熱があるんだろう。医者にみてもらったのか?」 「いえ、帰宅の途中から気分が悪くなって、帰って熱を測ったら39℃ありました」 「御免、もう休んで。僕にできることがあればなんでもするから」 菜々恵は布団に横になった。僕はその横に座ってタオルケットをかけた。 「すぐに心配して来てくれて嬉しかった。それだけで十分です。そばにいてくれると心強いです。今日は泊まってもらえますか?」 「もし、迷惑でなかったらそうしたい。一人では置いておけない」 「お布団が1組しかありません。体調不良の私と一緒に寝る訳にもいかないと思います。何か悪い病気で移るかもしれませんから」 「冷房を緩めれば心配ない、大丈夫だ」 「お湯を沸かしてくれませんか? 暖かいコーヒーが飲みたいので」 お湯を沸かしながら、コーヒーの用意をする。インスタントコーヒーがあった。 「夕食は食べたの? 途中でカットフルーツを買ってきたけど、食べる?」 「いつもは自炊するのですが、体調が悪かったので、帰り道でサンドイッチを買って来て食べました。フルーツ、美味しそうなのでいただきます。あなたは?」 「帰りに弁当を買ってきて家で食べた。大体毎日そうだから」 「結婚したら私が美味しい夕食を作ってあげます」 「そういえば、栄養士と調理師免許も持っている料理のプロだった。これは楽しみだ」 お湯が沸いたので、コーヒーを入れた。菜々恵は起きてコーヒーを飲んだ。そしてカットフルーツを平らげた。それを見て食欲があるから大丈夫かなと思った。 菜々恵はそれからまた横になったが、少し寒気がすると言った。熱を測ると39℃だった。すぐに冷房を緩めて、冷凍庫のアイスノンで頭を冷やす。菜々恵が持っていた解熱薬を飲ませた。フルーツで身体が冷えたのかもしれない。 「寒気がするので冷房を切ってくれませんか?」 「分かった。布団に入ってタオルケットをかけて後ろから温めてあげようか」 菜々恵をそっと後ろから抱いてやった。 「ありがとう。安心して眠れます」 本当に安心したのか、すぐに寝息が聞こえてきた。それを聞いて、明かりを落とすと僕もいつの間にか眠ってしまった。 夜中に、菜々恵が汗ばんでいるのに気が付いた。熱のためか汗でびっしょりだった。部屋の中もかなり蒸し暑い。 「ねえ、起きて、着替えをした方が良い。汗でびっしょりだから」 菜々恵は汗をかいていることに気が付いて、着替えをすると言って、衣類棚からタオルとパジャマと下着を出してきた。そしてすぐにタオルで汗を拭いて着替え始めた。薄暗いけど、僕は目のやり場に困った。 菜々恵は僕にかまわずすぐに着替え終えた。そして、脱いだ下着とパジャマとタオルを洗濯籠に入れた。僕はようやく菜々恵の方を見ることができた。 「気が付いてくれてありがとう。あなたが恥ずかしがることはないわ」 「いや、目のやり場に困る」 「元気になったらしっかり見てください」 「冗談が言えるほどなら大丈夫だ。もう熱が下がっているんじゃないか?」 菜々恵は熱を測った。 「36.5℃で今は平熱にもどっています。解熱剤が効いたのね」 「ポットに白湯があるから少し飲んだらいい」 僕がカップに白湯を注ぐと、菜々恵はゆっくりそれを飲んだ。そしてまた布団に入って横になった。それから僕は冷房を軽く入れた。悪寒はなくなったようだ。 僕はまた菜々恵にタオルケットをかけて、その後ろから軽く抱いた。すると菜々恵は向きを変えて僕にしがみついてきた。 菜々恵が元気だったら。僕は我慢して抱き締めるだけにした。菜々恵もそれが分かっていて抱きついているだけだった。また、二人は眠った。
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