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「あたし達と初めて会った時のこと、覚えてますか?」
それはあまりにも唐突な質問だった。
セレスタは一瞬だけウリックの方に視線を流し、そのあとはただまっすぐにこちらに眼を向けてきた。ただしその視線には、ある種の含みを持たせながら。
「あ、ああ、もちろん。ローゼンマリアでランディと大道芸をしている時、だよな」
「そうです。その後、あたしとパパが泊まる宿に来てくれて。次の日、一緒にバルゼスタインの王国祭に行ったんです」
馬車内に差し込んでいた夕刻の光が不意に陰る。どうやら林の側の街道を走っているようだった。セレスタのアクアマリンの瞳が、じっとこちらを見つめている。
……ああ、そうか。
セレスタは自分に伝えたいのだ。
バルゼスタインとエンディールは、“一日で往復できる距離ではない”、と。
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