6.ウリック=ボールドウィン

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 明日、ラベルに自分の身柄を引き渡すという手筈になっているのならば、少なくともウリックはこの馬車に乗っていてはいけない。仮にウリックが善意で自分を逃がそうとしているのだとしても、明日の時点でウリック自身がバルゼスタインにいなければ、魔法使いに逃げられた、という言い訳のしようもない。そこまで自身の立場を危うくさせる行動をウリックが取るかと言えば、答えはノーだ。  ラベルへの忠誠を守り、娘のセレスタを守り、自分自身が知りたいことも知る。  それらが例え相反するものであっても、自らの望みは全て通す。ウリック=ボールドウィンとはそういう男だったはずだ。 「ウリックさん」  短くなった煙草が、視線の先の口から離れる。ただその名を呼び、ただ反応を待つだけに留める。もうなにも言わずとも、沈黙がこの状況のおかしさを浮き彫りにしていた。 「はぁ……しゃあねえな。分かった。分かったよ」  ウリックは観念したように溜め息をつき、肩を竦めた。靴底に押しつけられた煙草の吸殻が、馬車の片隅に追いやられる。
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