15時、無音と独白

p.m.03:00

セカイは林檎を中心に廻っている。

────と、本気でそう思っていた頃があった。
かの有名なニュートンは林檎が木から落ちるのを見て万有引力の着想を得たというが、バンユウインリョクなどという小難しい言葉で説明されてもよくわからなかった幼き私は、セカイのまんなかには林檎があるらしい、と子供ながらに理解しようと試みたのだった。もっとも、変に理屈っぽくて頑固だった幼き少女は自身の理解の範疇にあるものしか認めまいとしていたのである。

万有引力もその内のひとつであったが、例えばそう、我々人間が地球という“球体”の上に住んでいるということも、理解し難いことであった。世界がまるいことを知ったのはバンユウインリョクを正確に理解するより後のことであったが、そのときも私は、「地球がまるいのは林檎がまるいからだ」などと自己満に理論づけたりしたものだ。