大外刈り

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大外刈り

「昨日のオリンピックの柔道の決勝見たか?大外刈りが『すこーん』って決まって気持ちよかったな」 「『すこーん』?」   「なんだよ!大外刈りは『すこーん』だろ!」 「ち が う よ  !」 「えっ?」 「『ばこっ』だよ!」 「『すこーん』のほうが刈ってる気持ちよさに合っているだろ!」 「鍛えられた足を鍛えられた足で刈っているわけだから『ばこっ』って感じのほうが合ってるでしょ!」 ~~10年後~~ 今週末のプレゼンの資料で重たいリュックを背負って、帰りの電車に揺られていた。 駅について階段を登り切った辺りで近くにいた女性が悲鳴を上げた。 どうやら見知らぬ男がその女性のカバンを奪って逃走したようだ。 僕は戸惑いながらもその男を追いかけようと決心した。 走りだそうとすると、見るからに屈強な青年が僕より早くこっちに走ってきた。 僕をひったくり犯と勘違いした青年は僕につかみかかり綺麗な大外刈りを決めた。 予想に反し、大外刈りは『どっっっさ』だった。 まだ気づかずに青年は僕の腕を決めた。 僕はとっさに叫んだ。 「ち が う よ !」
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