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「それよりさ、今日学校終わった後で高校最後のプリクラ撮り行こうって話してたんだけど、亜美も行ける?」
「どこまで? また平まで行くの?」
「ううん、サンプラザあたりにしようかって」
この町から一番近い繁華街がある平までは電車に乗って三十分ぐらいかかるけど、サンプラザは同じ町内のショッピングセンターだ。
田舎臭いしょぼくれたゲームコーナーには古い旧式のプリクラ機が一台しかない。いつもならあんな所に、と敬遠するところだけど、今夜は卒業の前祝いをするから早めに帰って来いとお母さんに何度も念を押されていたのを思い出す。
もしかしたらみんな似たような事情を抱えているのかもしれない。
入試が終われば受験勉強から解放される。思いっきり遊べると夢にまで見た世界は、現実に迎えてみれば意外と平凡な毎日で。 でもなんだか妙に慌ただしくて。
高校生活最後の〇〇は、噛み締める暇もないぐらい次々と押し寄せて、あまりにも無機質に淡々と、粛々と終わりを告げていってしまう。
気がつけば私達に残された行事なんてもうほとんど残っていない。
早く卒業したい。
早く自由になりたい。
早く大人になりたい。
常々口癖のように言い続けてきた私達は、いざ卒業を目の前にした途端、やっぱり石にかじりついてでもこのまま高校生で居続けたいとでもいうように、自ら最後の〇〇を無理やり作っては、いそいそとそれに向けて過ごすようになっていた。
そうして最後の〇〇を繰り返している限り、本当の最後はいつまでも迎えずにいられるような気が、心のどこかでしていたんだ。
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