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大勢の人間たちが押し掛けるその中に、私はいた。
民衆の娯楽として用意された、処刑場の中に。
皆が等しく、命が散る様を楽しめるよう、処刑場は円形状になっている。
階段状に一段ずつ高くなるように設計された席には、隙間なく人で埋め尽くされていた。
その円形状の中心には、巨大なギロチンとそこに横たわる一人の女性の姿があった。
青く艶を放つ豊かな髪は、処刑の際に邪魔だとバッサリ切られ、日の光を知らないようにきめ細かく真っ白な肌には、見ているだけで痛々しい青黒い痣が無数に付けられている。
優しく細められるだけで、あらゆる者たちを魅了した大きな瞳は伏せられ、女性らしい丸みを帯びていた身体はやせ細り、処刑台の上に力なく横たわっていた。
今から処刑される女性、それはこれまで長らくお仕えしてきた――フラン・アンティローゼ様。
「殺せ!」
「こんな悪女、さっさと首をはねてしまえっ!」
何も知らない民衆が叫び、フラン様に向けて石を投げつける。
憤りや憎しみではない、ただ弱く抵抗できない者を痛めつけたい、加虐性に満ちていた。
(何も……知らない者たちが勝手なことを……)
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