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その場の雰囲気に飲まれ、フラン様に向かって罵声を発する愚民どもを、私は睨みつける。
しかし、それ以上どうする事も出来なかった。
ただここで、愛した方の最期を見ていることしか。
この国の王太子との婚約が決まっていたフラン様は、王太子妃の座を狙っていた妹君によって身に覚えのない罪をでっち上げられ、嵌められた。
冤罪だと分かっていながら、フラン様は釈明されなかった。
ただご自身の罪が他の者の手によって捏造されるのを、黙って見ているだけだった。
その結果、フラン様は王家を欺いた悪女として、処刑されることが決まった。
私は、密かにフラン様に想いを寄せていた。
しかし私は、ただの使用人。
身分の違いから、その恋は決して報われないものだと思い、心の奥底にしまっていた。
(こんなことになるのなら……、命をかけて、あの方を連れて逃げれば良かった)
フラン様が処刑される。
それを目の当たりにし、あの人に対してどれだけ深い想いを抱いていたのかを、今になって思い知らされる。
しかしどれだけ後悔しても、もう遅い。
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