処刑されるあなたは何故美しく微笑むのか

6/11

39人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 目が覚めると、私の身体はベッドの中にありました。  確か机に突っ伏したまま、眠ってしまったはず。誰かが私をベッドの中まで、運んでくれたのでしょうか?  そう不思議に思っていると、目の前に殺されたはずの彼がいました。  始めは夢かと思いました。  しかし、触覚や嗅覚が、目の前の光景が現実であると伝えてきます。  恐る恐る今日の日付を尋ねると、彼が死ぬ丁度1ヶ月前だと分かり、時間が撒き戻った事を知ったのです。  願いが叶った私は、彼が賊に殺されないよう対策をしました。  しかし……、彼はその1ヶ月後、今度は突き落とされそうになった私を庇って死んだのです。  私は再び祈りました。  もう一度、時間を巻き戻してくださいと。  目覚めると、また1ヶ月前に戻っていました。  そして1ヶ月後、彼は死んだのです。  前回とはまた、違う理由で。  何度も何度もこの1ヶ月間を繰り返し、1つ分かった事があります。  彼はいつも、私がきっかけで亡くなるのです。  しかしどれだけ私から彼を遠ざけても、あの人は私の前に現れ、そして死ぬ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加