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私が巻き戻りを願わなければ、彼を救う旅はこれで終わる。
でも……、気づいてしまったのです。
処刑という見世物に高揚する民衆の中で、只一人、涙を流し私をじっと見つめるその姿。
処刑されるこの瞬間、私は彼から深く愛されていた事に気づいたのです。
繰り返される時間の中で、何度か彼に想いを伝えたことがありました。しかし、彼は私の想いに決して答えてはくれませんでした。
そんなあの人が今、私の死を目の当たりにし、涙を流して名を呼んでいる。愛していると叫んでいる。
何度も何度も。
言葉も表情も、今にも駆け寄らんばかりに前のめりになった身体も、全てが私への愛を伝えている。
この瞬間、私の心は最高の幸せに包まれたのです。
本当は、処刑が成功したら全てを終わらせるつもりでした。
もう二度と巻き戻りは願わず、死を受け入れようとしていました。
しかし、願ってしまった。
救う為ではなく、
あの人が私を愛する瞬間を見たいと。
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