男の子ってさ

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「そんな遠くにいるってことは俺のこと嫌いなんだ」  つんけんし始めた峰山を横目で見て保は大きなため息をつく。湯気が天井へのぼっていくのが見えた。タオルで股間を隠しながら峰山を見る。薄い胸板に桃色の乳頭が保の自我を揺るがす。ほんとうに女みたいな体だなと薄ぼんやりしていると、ざぱざぱと峰山が近づいてきた。でもこいつ背は高いんだよな。膝立ちで保の前にやってくると、じっと顔を見つめられる。その視線に耐えられなくなって目線を外した。 「男の子ってさ、変な生き物だよな」  ふとそんなことを話し始める。意図がわからないため黙って聞いていた。 「男同士で扱き合いとかしても、それはノリで済まされるし。なぁ、保」  ぬっと薄い胸板が眼前に迫ってきて保は後ろへ後退する。しかし、すぐに壁際まで追い込まれてしまった。 「俺、実はそういうのしたことないんだ。俺の役のために教えてくれよ」  おまえのほうがそういうの詳しいだろ、と興味津々な瞳で見つめられ言葉に詰まる。たしかに高校の頃はよくふざけた友人と扱き合いをしたことがあるが、それは過去の話。それに峰山は友人ではなく客人だ。状況があまりにも違いすぎる。 「その、役ってのはどんなやつなんだよ」  まだ話の元である役の話を聞いていない。すると峰山はふっと頬を緩ませる。 「江戸時代の男色の話。男色ってわかるか」  ふるふると首を小さく振ると、ちゃぷんと音を立てて峰山が保のタオルを剥ぎ取る。 「男同士の恋愛ってやつさ」
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