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それ以来、旅館の手伝いを積極的にしてオーナーからも他の住み込みのアルバイトからも可愛がられ保は成長していった。たまに父親を思い出して悲しくなることはあっても、涙を流すことはなかった。
大学に進学するときも、渋る保をよそにオーナーは学費を出してくれた。出世払いでいいからと無理やりお金を出してきたのを今でも保は忘れていない。
だから自分が今涙を流していることが不思議でたまらなかった。湯船に涙が入ってはいけないとすぐに出て、木でできた風呂椅子に座る。頭からシャワーを浴びた。
脱衣所に行くとそこには峰山の姿はなかった。代わりに、走り書きのメモが保の服の上に置いてあった。
『保へ
短い間だったがほんとうに助かった。
また来年もよろしく頼む。
俺は携帯を持たない主義だったが、おまえと連絡をとりたくてわざわざ携帯ショップに花房と行った。裏に電話番号を書いておくから、何かあったら電話してこい
峰山幸太郎
じゃあな。保。楽しかったよ』
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