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「保くんってさ、今時の大学生っぽくないよね」
不意にかけられた言葉にどう反応していいか悩む。
「そうかな。それなら愛理さんもあの二人と比べて大人っぽいと思うけど」
「まぁ、そうね。あの子達はれっきとしたお嬢様で甘やかされて育ってきた匂いがぷんぷんするもの。対して私は庶民上がりの一般人。彼女たちより現実的な見方をしてるかもね」
つん、と上を向きながら愛理さんは言う。強気な子なんだなと思った。あの二人の女子よりかは話が合う気がして、言葉を続ける。
「愛理さんはさ、将来の夢とか決まってるの?」
突然何? と言いたげに彼女の視線がこちらを向く。
「さぁね。どこかの大手企業の事務職にでもなろうかな。もしくはバリバリのキャリアウーマン」
彼女は自分の容姿のレベルをよく理解しているらしい。その言葉には現実味があった。頭の良さもうかがえる。
「保くんは? 将来何になるの?」
聞かれて言葉に詰まる。俺はあの旅館で働き続けてオーナーに恩返しをしなくちゃと思っていた。しかし、それでいいのだろうか。行きたい場所があるわけではないが、地元にそのまま居座るというのも少し億劫な気が最近してしまう。しかし、自分の居場所はそこしかないことに気づけば、度を超えた夢なんてのも描けなくなる。
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