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ワンコール
日曜日の仕事が終わった夜の八時に保は意を決して峰山の電話番号をタップする。ほどなくして、プルルルルと着信音が耳元で響いた。
「はい。峰山」
「あっ……えっと」
ワンコールで出るとは思いもよらなかったので慌てふためく。電話口ではくすりの忍び笑いをする声が聞こえてきた。
「保か。久しぶり。連絡してくれないから心配してたんだぞ」
品のいい声で峰山が笑う。スマホをぎゅっと握りしめて言葉を吐き出す。
「久しぶり……忙しいだろうと思ってかけられなかった」
「俺と保の仲だろう? 今更遠慮することない」
うん、と頷くが電話ではその動きは相手に伝わらない。しばしの沈黙のあと保は他愛もない話題を振る。
「そっちはどうだ? 舞台のほうは」
ああ、と軽く笑いながら峰山が答える。
「大盛況。男色ものがかなり人気らしくて、若い女がたくさん見にきてくれてるよ」
それも美人ばっかりと峰山は冗談めかして言う。
「保のほうは? 学校にバイトちゃんと両立できてるか?」
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