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「……もちろん。両方頑張ってる」
「そっか。変わらず元気でやってるんだな」
そのあとたった十分にも満たない会話をして、峰山が切り出す。
「悪い、保。そろそろ寝なくちゃならない。おまえもあったかくして寝ろよ」
「あ、うん。峰山さんも風邪引くなよ」
「ああ。体調管理はばっちりだ」
じゃあな、と峰山が答えて通話が途切れる。ツーツーと流れる音を聞きながら保もスマホをタップした。
布団に寝転びながら天井を見上げる。久しぶりに聞いた峰山の声は以前と変わっていなかった。峰山はきっと俺のことを弟のように心配してくれていたのだろう。そう思うと心があたたかくなる。枕元にある河童のぬいぐるみを掴んだ。
「峰山さん……」
唯一のつながりを大切に包むように名前を呼ぶ。早く来年になれと強く願う自分がいた。桜が咲いて、葉桜になった頃また会える。それまで勉強もバイトも一生懸命に取り組もう。成長した自分を見せられるように。湯たんぽに足を挟みながら保はうとうととし始める。
この前愛理さんが言った一言が頭に響いた。
『あんまり待ちぼうけしてると、置いてかれちゃうよ』
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