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「それはこっちの台詞だ。嘘ついてもバレてるからな。茜のやつ余計なことを言ったんだな。言ってみろ。今度ばかりは俺が叱ってやる」
真剣な瞳で顔を覗き込まれてしまい、保は目線を逸らした。すかさず頬を掴まれる。力づくで目を合わせられた。
「保。言ってみろ。言わなきゃ伝わらない」
ぐっと唇を噛み締める。自分の気持ちを言葉にしてしまったら今の心地よい関係が崩れ去ってしまいそうで怖かった。いろんな言い訳が頭をよぎる。
「だから何でもないって……」
もごもごと呟くと、聞こえないと叱咤される。峰山の手を振り払い二、三歩後ろに下がった。保の悩みの種である峰山本人は何も心当たりはないようで、それが無性にむかついてきた。
「保。ちゃんと言え」
「……峰山さんのせいだ。あんたが俺なんかに構うからいけないんだ」
保のか細い声は峰山に届いたらしい。眉間にシワを寄せて峰山は首を傾げる。
「どういうことだ?」
「茜から聞いたんだ。あんたあいつにも俺にやったみたいなことをしてたんだろっ」
「……それで? 保は何が嫌なの」
飄々とした表情で峰山は保に顔を近づける。その距離が普段よりも近くて、ぐっと息を止めた。
「っだから、誰でもいいってことだろ。茜でも、俺でも、どっちでもいいんだろ」
自分で言っていてよくわからなくなってくる。何を言ってるんだろう俺は。その間も峰山は瞬きもせずこちらを見ている。一人だけ焦っているみたいで恥ずかしかった。
「……へぇ、茜に嫉妬してるんだ」
沈黙の後、峰山がにやにやと笑いながら言ってきた。
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