送っていくよ

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 周防の少し後について歩きながら駐車場へと向かった。並んで歩くのは体裁が悪い気がしたからだ。  周防の背中を追いながら、なんで先輩に用事があるって言っちゃったんだろうと考えた。  あのひとがなんとなく蜜に気があるように思えたからだろうか。気のせいだと思いたかったけど、粘着質な視線を感じてしまったのだ。  笑いかけなきゃよかったのか。  とりあえずの愛想笑いが裏目に出たのかも。それで勘違いさせてしまったなら申し訳ない。  考え事をしながら歩いていたせいか、立ち止まった周防の背中に突撃してしまった。広い背中に顔を打つ。 「った」 「おいおい大丈夫か」  振り返った周防がクククっとおかしそうな笑い声をたてた。 「鼻つぶれてないか?」 「大丈夫です」  痛む鼻をさすりながら見上げると周防はくったくのない顔で笑っている。嫌味のない笑い方だと思った。大人なのに子供みたいだ。 「散らかってるのは勘弁な」  周防はシルバーのフォレスターの鍵を解除すると助手席のドアを開けた。置いてあった大きなバッグを後ろ座席に放り、サっとシートを手で払った。 「どうぞ」  ドアを押えながら蜜をエスコートしてくれる。 「お邪魔します」  深いシートに体を沈めると外からドアをしめ、自分は運転席の方に回って乗り込んできた。  全ての動きがスマートで人を乗せることに慣れているように見えた。害のなさそうな笑顔をするくせに。 「窓とか勝手に開けていいから。シートベルトだけして」 「あ、はい」  もたつく蜜を横目で見て、周防は小さく笑って身を乗り出してきた。 「ここ」  のしかかるように近くなった距離に心臓がどきんと打った。  家族以外とこんな至近距離になったことがない。  ふわりと周防の匂いがして、あ、大人の男の人なんだ、と思った。蜜にはまだない色気のような。  そして急いで打ち消す。なんだか思考回路がおかしい。  一方の周防は全く意識するでもなく、蜜のシートベルトを着けるとためらいもなく体を離した。  鼻歌まじりにラジオをいじっている。  
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