Boy meets Men

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Boy meets Men

 4月。春。  高校の入学式で初めての教室で、名前を呼ぶあの人がなぜか眩しそうに蜜を見た。  まるで口の中で大玉の飴を転がすように嬉しそうに、おいしそうに。 「佐藤(さとう)(みつ)」  太くて優しい声が響いた。  ふざけているとしか思えない名前だけど、哀しいかな本名だ。  ひとつだけ言い訳をするなら母の再婚相手がたまたま佐藤さんで、元は市原(いちはら)蜜という。  ちなみに市原姓の父も今は違う家族と仲良く暮らしている。  そんな複雑な名前をからかう人は多い。  子供の頃ならなおさら。  だから自分の名前がものすごく嫌いだった。なんでこんな変な名字の奴と再婚したんだと母を怒ったこともある。  でもそのおかしな名前を、20代後半の担任の男が呼んで幸せそうに微笑んでいる。  大丈夫かと心配になりそうな担任の名前は周防(すおう)獅子(れお)と言う。  蜜以上にキラッキラとインパクトがあるうえ、名前に似合ったガタイのいい男だ。  190センチはあると思う長身にスーツの上からでもわかる筋肉は同じ男としてうらやましいくらい。  でも口調は柔らかく威嚇するような強さはない。  そんな優しげな声で黒い名簿を開いて一人ずつ名前を読んで、そして口元を綻ばせたのだ。 「ずいぶんおいしそうな名前だよな」と笑って。
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