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「そうですけど」
不審が顔に出たのだろう。
その人はバンバンと蜜の肩を叩き、胡散臭い笑顔を浮かべた。
「そう怖がらないでよ。そっか、君がおいしそうな蜜くんか」
はあ? という言葉がでかかった。
なんで初対面の知らない男にからかわれなきゃいけなんだ。たとえ教師だとしてもいい気分はしない。
しかも美味しそうな蜜くんってなんだ?
どこかの教師と同じ事を言う。
蜜が押し黙るとその人はじっと蜜の顔をのぞき見た。
「へー。うん、すげえ綺麗な子だなあ」
まじまじと見られ、蜜は眉をひそめた。不躾にもほどがある。さっきからなんなんだこのひとは。
その時だった。
バタバタと廊下を走る音がして、部屋の中に影が落ちた。周防だった。ドアをふさぐように大きな体が覆っている。
「悪い、蜜! 見つかったか?」
優しい声に全身から力が抜けた。
もう大丈夫だと思ったら、なぜかひどく心細くなった。
「先生」
それが周防にも伝わったのだろう。一歩近づく。
だが周防と蜜の間にいる白衣が揺れた。
「周防先生だめじゃん。生徒を小間使いにしちゃ」
そこで周防も彼の存在に気がついたらしかった。
わ、っと驚き後ずさる。
「びっくりした。何だ、いたのか」
「いたのかじゃないでしょ。こんな目の前にいるのに気づかないってどういうことよ」
口調から二人の仲がいいことが分かった。
周防は白衣の男と蜜を見比べて不思議そうに首を傾げた。
「なんでここに二人でいるんだ?」
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