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【 第九話: うちに猫がいる? 】
お兄ちゃんが玄関の扉を開ける。
『ガチャ……』
「どちら様……。あっ!」
「龍之介くん。この間はどうも……」
「あ、明日香さん……、ど、どうしたの急に訪ねてきて……」
「あの実はこの前、私の部屋で泊まった時に、龍之介くんこれ忘れていったから、届けに来たの」
「あっ、学生証……。ありがとう……」
「龍之介くん、今お邪魔してもいいかな?」
「あ、ちょっと今はどうかな……」
「部屋に上がっちゃダメ?」
「い、いや、ダメっていうことはないんだけど……」
「じゃあ、上がるね。あれっ? 何か奥で布団の塊が動いてる……」
「あ、あ、あ……」
私は聞き耳を立てながら、布団の中であの格好に着替え、ひょこっと顔だけ出した。
「りゅ、龍之介くん、うちに猫でも飼ってる……?」
「あわわわ……」
そう、私は布団の中で、咄嗟にメイド猫ちゃんに変身しちゃったのだ。
そして、掛け布団を大きく宙へ投げ飛ばすと、両手を猫ちゃんのポーズで、二人にこう言ったんだ。
「ミャ~、龍ぴょん♪ 早く続きのメイド猫ちゃんごっこしよ♪」
「あちゃ~……」
お兄ちゃんは両手で頭を抱えて、床に跪く。
「わ、若菜ちゃん……?」
綺麗なお姉さんは、私の格好にひどく驚いている様子。
「あ、ご、ごめんなさい……。そういうことだったの……。わ、私帰るね……。それじゃあ……」
『バタン……』
お兄ちゃんは床に両手をついて突っ伏し、相当ダメージが大きそう。
でも、これで私がお兄ちゃんの彼女だということを、完全にインプットできたと思う。
(私の完全勝利だ!)
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