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その部屋は いつも通り窓際には赤いゼラニウムとオレンジ色のガザニアが並んでいて。 いつからか たくさんの色と優しさと幸せに彩られたこの部屋は 今日また新しい家族を迎えて。 ほとんどコンクリートの壁しか見えない ある意味絶景のベランダに続く大きな窓からは 冬の暖かな日差しが差し込んで。 そのここで1番日当たりのいい、暖かい場所に置かれた 小さな木のベッドの中に眠る 小さな小さな天使のようなその子は。 今日初めて 外の空気を吸って 冬の寒さに触れて 空の青さを知ったその子は。 ‘未夢‘と名付けられた。 俺と結衣と。 子供が生まれてから、毎晩悩みに悩んで決めた。 たくさんの意味と願いを込めて。 この子の未来が夢や希望で溢れたものでありますように。 自分の未来にしっかりと夢を抱ける強さを持った子になりますように。 いつか、大切な誰かの未来に夢を与えられるような大きな愛を持った人生を送れますように。 そんな俺と結衣の想いや願いや希望を込めて。 この令和という時代を どうか大きな夢を抱いて、未来に向かってまっすぐ歩いていけますように。 未夢だけではなくて。 俺も、結衣も。 この子と一緒に。 結衣と 空からまっすぐに結衣の下に舞い降りた命を 何があっても、どんなことがあっても守っていく。 いつか孔子の言葉で。 人は40にして不惑の境地に達し、 50にして天命を知る。 なんて言葉があったけど。 結衣を、未夢を、この家族を一生をかけて守っていくこと。 それこそが 俺の天命なのだと。 50を目前にして与えられた この幸せに満ち溢れた使命に心からの感謝を。
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