550人が本棚に入れています
本棚に追加
「誰と。」 お袋に突っ込まれる。
そりゃそうだ。主語がない。
「彼女。心配して一緒に来てくれた。今家さいる。」
「なんだ、お前。彼女いだのが。」
と次男
「まあ、昌もいい歳だからな。」
と長男も続ける。
「うるせえな。」
「いや、たまげた。お母さんお前が女の子連れて歩いてるの見たことないがら。」
親父の手術を待っている家族の会話とは思えない会話。
「いいべ、俺の話は」
そう遮ると
状況が状況なだけに
それ以上誰も突っ込んでこなかった。
間もなく午前3時を回ろうかという頃
看護婦さんが1人俺らのいる待合室に来た。
「武内さんのご家族の皆さんですか?」
「はい、そうですけど。」
「今手術が終わりまして、先生からお話があるのでご案内します。」
お袋と、俺たち兄弟は看護婦さんの後に続いて
パソコンが置いてある小さな部屋に通された。
汗染みがそのままの手術着
白髪混じりの頭で、眼鏡をかけた男性が入ってくると
俺たちに一礼した。
この人が手術をしてくれたお医者さんなんだろう。
「手術は無事終わりました。」
その一言にほっとする。
ああ、無事でよかった。
親父、死ななくてよかった。
最初のコメントを投稿しよう!