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「誰と。」 お袋に突っ込まれる。 そりゃそうだ。主語がない。 「彼女。心配して一緒に来てくれた。今家さいる。」 「なんだ、お前。彼女いだのが。」 と次男 「まあ、昌もいい歳だからな。」 と長男も続ける。 「うるせえな。」 「いや、たまげた。お母さんお前が女の子連れて歩いてるの見たことないがら。」 親父の手術を待っている家族の会話とは思えない会話。 「いいべ、俺の話は」 そう遮ると 状況が状況なだけに それ以上誰も突っ込んでこなかった。 間もなく午前3時を回ろうかという頃 看護婦さんが1人俺らのいる待合室に来た。 「武内さんのご家族の皆さんですか?」 「はい、そうですけど。」 「今手術が終わりまして、先生からお話があるのでご案内します。」 お袋と、俺たち兄弟は看護婦さんの後に続いて パソコンが置いてある小さな部屋に通された。 汗染みがそのままの手術着 白髪混じりの頭で、眼鏡をかけた男性が入ってくると 俺たちに一礼した。 この人が手術をしてくれたお医者さんなんだろう。 「手術は無事終わりました。」 その一言にほっとする。 ああ、無事でよかった。 親父、死ななくてよかった。
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