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その後も、お医者さんは懇切丁寧に 素人の俺らもわかるような言葉で 今の状況、今後の見通し、治療についてなど さまざまことを教えてくれた。 説明が終わると 「先生、ありがとうございました」 と目に涙を溜めて深々と頭を下げるお袋 農家の嫁をしながら、息子3人を育て上げた肝っ玉母ちゃんも 流石に長年連れ添った親父の危機に、心細かったのだろう。 「今日から1週間が山です。それを超えられれば、まず一安心でしょう。 長丁場ですから、面会したら今日はゆっくり家に帰って休んでください。」 と言われ、親父のいる病室へと案内された。 何本もの管に繋がれ、頭には大きなネットが被されていて。 見たこともない痛々しい姿に絶句する。 小さい頃は強くて、デカくて、時々怖くて。 そんな親父はいつの間にか、こんなに小さくなっていたのか。 俺がデカくなっただけかもしれないが。 そしてさらに、親父の手を握りながら静かに泣くお袋の背中は もっともっと小さく感じた。 「今はまだ、薬で眠っていますから。」 と看護婦さんに言われ、俺たちは一度家に帰ることにした。 二番目の兄貴は、明日の朝部活の送り迎えがあるからと真っ直ぐ自分の家に帰っていった。 お袋と、1番上の兄貴と実家に帰ると、居間の明かりがまだついていた。
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