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実家の居間で、急に2人きりになった俺と結衣。 どうしたらいいか分からず 急に経験したことのないような不思議な緊張に襲われる。 「結衣。」 「・・・。」 「結衣。ありがとな・・・。」 言葉にしたら、涙も一緒に溢れてきた。 突然の出来事に戸惑い、動揺して何にもできなくなった俺。 そんな俺をなんとか支えようと 一生懸命に考え、行動して、俺を実家まで連れてきてくれた結衣。 きっと結衣だってテンパってたはずだ。 情けない俺の姿に、困り果てていたはずだ。 東京の俺のマンションを出る前、バタバタと準備をしながら 焦って、目に涙を溜めていた結衣。 きっと、‘どうしたらいいの?‘と助けを求めたかったはずだ。 だけど、その思いを必死に堪えて俺のために 機転を利かせて、俺の手を引いてくれた結衣。 「ありがとう、結衣・・・。」 言い知れない感謝や愛おしさが 涙になって、後から後から溢れてくる。 弱った親父の姿にショックを受けたり、 自分が思っていたよりも、実はずっと年老いていた両親の姿に 切なさや寂しさを感じたり 親父の無事に安堵したり それもあると思うけど。 何よりも。 俺よりずっと年下の、まだまだ子供だと思っていた結衣が。 いざというときに こんなにもしっかりした、頼りがいのある女性だったと思い知らされた。 そして、いざというときの自分の頼りなさにもガクッときた。 情けねえ男だな。 自分でそう思う。 今日の結衣は あたふたするだけの俺なんかよりもずっと大人で。 自分だって混乱していただろうに。 俺の前では絶対それを見せなかった。 女性って、偉大だなあ、と。 素直にそう感じた。
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