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元号が平成から令和に変わる。 平成元年生まれの私は、平成と共に年齢を重ね今年で30歳になる。 自分の生まれた元号が終わり、新たな時代が始まるという不思議な感覚を感じていた。 「新しい元号、令和だってよ。なんか不思議な感じだね、平成終わるんだね。」 少々ワクワクしながら、ソファで長い足を投げ出しながら新聞を読む男に声をかける。 「ふーん、令和か。ワクワクする?俺2回目だからな。何にも変わんねえよ。」 夢がない。夢がなさすぎる。もう少し私のワクワクに付き合ってくれもいいじゃないか。 喉元まで出かかった言葉が姿を変え、小さくため息をつく。 「そこのお子様、そんなとこでいじけてないで、こっちおいで。」 と、夢のない脚長おじさんはこちらを見上げて微笑んだ。 まあいいか。こんなこと日常だ。 とりあえず彼の隣に座り、スマホの画面を開く。 隣にいるけれど、お互い別々のことをして、別々のことを考えて、でもなんだか安心する。 そんな空間が私は好きだ。
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