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刺繍を刺している時、ものすごく静かさを実感する。
とても孤独だということを思い知らされる。
あまり外に出ない生活が続くと、世界と自分が隔てられてしまったような気分になる。
漠然な死への恐怖、これからの見えない未来。
運が悪いとズルズルとソレに引きずられる。
そのまま彼は闇に落ちてしまったのだろうか。
あるいはもっと明るいかもしれない。
単純に自分の人生の時間を決めていたのかもしれない。
『私の人生は20代で終わりました』
あるグラビアが語っていた。
突然すぎる、と感じているのは第3者だけ。
本人は突然でもなんでもなく、その時間の流れの中で自分の時間を止めたかったのかも。
それは本人にしか分からない。
私たちは想像するしかできないのだ。
プス、と指に針が刺さる。
「…痛い」
血が丸くなっている。
生きていると実感できないのに、比喩ではなく、現実に引き戻された。
いつも心臓が動いていて、血が通っていて、酸素が必要で…などということを、誰がいつも考えながら生きている?
血が通う人間と、血が通っていた人間。
自分の意思で自分の時間を止めるのか、
自分の意思に関係なく時間が止まってしまうのか。
『自殺は無責任な人がやることよ』
いつか私のハハオヤが言っていた。
彼女は彼が自殺をした事実を見て、まだそんなことが言えるのだろうか。
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