03.不吉な末路

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「どうしたの?」 黒須の怪訝そうな声が耳を滑る。 それと目が合った気がした。本能的な恐怖のさざ波が、どっと押し寄せた。 気づけば、あたりに点在していた生垣、その椿がほとんど落花していた。 まるで見えない炎に炙られているように、クシャリと小さく縮んでいき、やがて全て消えた。 「ねぇ──」 黒須の言葉は最後まで聞けなかった。 息があがる。咥内は乾いていた。 気がつけば、雑木林のもと全速力で駆け戻っていた。 振り返ると、──まだ、いる! あの写真で見た赤い残影が追いかけてくる。 「うわっ! ……と」 転びそうになり、三谷はまた前を向いて逃げることに専念した。 横腹が痛い。こんなに全力で走ったのはいつぶりだ? 日頃の運動不足をこれほど嘆いたことはない。 だが、それだけではない。 なんだこの、まるで夢のなかにいるような感覚は。 逃げたいと心は逸るのに、足が泥沼に嵌まったかように重く感じる。 これではいずれ──。 ひたりと、腕に違和感を感じた。もう追いつかれた!? 「っ!」 それに触られた腕が、耐え難い熱を帯びた気がした。だがそれも一瞬のことだった。感触がふいに消え去る。 ……なんだ? 振り切ったのか? 三谷は振り返り、自分の腕を見下ろした。 ──三谷の見ている先で、自分の腕が、熟れすぎた果実のように、ボトリと落ちた。
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