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もう二度とは行かない。 3300円とはなかなか高金額だ。しかも次回は割引もない。 そう心に決めた。 だけど、何故かその夜、身体は違う事をしていた。 まるでストーカーだ。 俺は美容院のサイトを見ていた。 『全ての美が叶う場所に』なんて大胆なキャッチフレーズが出ている。 そのサイトを進んでいく。 予約画面にスタイリストの一覧があると確認をしていた。トップスタイリストとして、白黒の写真を飾る男性。指名料金で5000円~。なんとも恐ろしい価格帯だ。 そのまま俺はスタイリストの写真を見ていくと伊東の名前を見つけた。 今日の姿よりも少し若そうで黒い髪をしていた。満面の笑みでハサミを持つ写真。スタイリスト歴は10年以上となっていて、指名料金も500円かかる。 《…伊東さんに切ってもらうの…金かかるんだ。》 俺は自分の髪に触れる。そんな事考えたこと無かったのに、伊東さんは確かに切るの上手かった、言い訳の様にしていた。 そう、分かっている。 伊東さんはスタイリスト。だから接客も上手い。 そこにはちゃんと金銭的なものとしてサービス価格に乗っている。 でも、 何故か、この蕾がついていた。 もっと可愛い人も、美人な人も居たのに。 静かに惹かれる。 分かっているよ。 こんなの馬鹿な感情だって。 だからちゃんとまた二ヶ月後くらいに行こう。 客だから。
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