あなたとうどん

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 村上さんはバイトの先輩で、ムードメーカーといった感じだ。誰にでも気さくに声をかけていて、私もバイトを始めたばかりの頃はよく助けてもらっていた。  もっとも、優しさは私だけに向けられているものではなく、そういう性分なのだと思う。  ちょっと軽い感じのノリは私には合わないような気がして、私はむしろ一歩引いているのだけれど……。  四月も終わりに差し掛かり、ゴールデンウィーク手前でいつもならウキウキしているはずの私は、今年はそうでもなかった。  だから、休日に予定が入るのは悪いことではない。  家にいてもどうせゴロゴロするだけだし、そうしているうちに一人が寂しくなって、そのまま沈んでいくだけなのだから。  それにしても、うどん? ここ尾道では、どちらかと言えば『うどん』より『ラーメン』だ。醤油ベースのスープに豚の背脂がたっぷり入った、『尾道ラーメン』である。  しかも、朝の七時集合なんて早すぎる。他にもどこか回る予定があるのだろうか。朝しか開いてないうどん屋とか?  お腹は空かしていった方がいいのだろうか。少し朝食をとっておいた方がいいのかな。  きっと、バイト仲間を数人誘っているのだろう。  和くんも来るのだろうか……仲良しだから来るだろうな。あれからシフトもすれ違いで、会っていないけれど……  まあ、二人きりでないなら、それはそれでいいのかもしれない。  でも、そうなると和くんの彼女も来るのだろうか。それはそれで嫌かもしれない……  私はバイト帰りの思考を『うどん食いに行こ』に支配されながら、まだ少し冷える夜の空気に長袖を羽織った。  
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