骨 (4)

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「それって、勘違いなの?」 「え、何でだよ」  意味深に見せられた、荷車に乗せられた白い骨の山。あれは、解剖で使われた動物の骨だったのだ。人間の骨などではなく。  あの場に居合わせた女性は、隣の大学で解剖学を学んでいるらしい。その実験で使った動物の骨を、研究室に置き切れなくなるとあの公園に埋めに来ていたと言うのだ。  誤解が解けてみればなんて事ない話で、俺も柳生も納得して疑わなかった。最後まで腑に落ちない顔をしていたのは部長と、今話したハジメくらいだ。  全く、2人とも考えすぎなんだよ。そう言おうとして、その数秒後には俺は黙るしかなくなった。 「あの大学には、解剖学が出来る学科なんてなかったはずだ」  解剖学っていうのは、確か医学部や獣医学部のような学部がなければ、出来なかったと思うけれど。記憶を辿るようにそう言うと、ハジメはPCの電源を入れる。 「少なくとも、俺が通っていた5年前には、だけどね」  そう言いながら大学名で検索すると、結果を指差しながら俺に見るように促す。見れば、とても覚えきれないような数の学部学科が並んでいた。他キャンパスの分まで含めると、かなりの規模になるのだから不思議ではない。  だけど、そこにはやっぱり、ハジメの言うような学部は表記されていなかった。 「待てよ。つまりじゃあ、あの骨は何だっての?」 「さあね?本当にただの動物の骨かもしれない」  そこで一旦言葉を区切ると、意味ありげに俺の目を見てにこりと微笑む。その視線は、まるで部長のものとそっくりだった。  でも、人間の骨ではないとも、言い切れない。つまり、ハジメも部長も、言いたいのはそういうことなんだろう。 「でもまあ、限りなく怪しいことに変わりはないんじゃない?」  実際、学科は嘘をついていたのだから、他だって本当のことを言っているのかは怪しい。そもそも、あの量の骨を、女性1人で埋めさせるだろうか。それも、あんな手入れもされていない林の奥に。  ひとつ不審な点が判明してしまえば、あんなに納得していても次々と疑問が湧いて来る。  そういえば、部長はあの後なんて言っていただろうか?俺はつい数時間前の記憶を遡る。
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