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女性の道案内を受け別れた後、部長の指示で、俺たちはわざわざ隣の大学に立ち寄ってから部室へと戻った。
そこまで公園であったことに関する話はしないようにと、なぜかグループチャットを通して部長に言われていた。部室に着くなり、よっぽど我慢していたのか、柳生が食い気味に話し始める。
「何で話しちゃダメだったんですか!?」
「だって、どこで聞かれているか分からないからね」
よほど話したかったのか息を荒くする柳生に対し、部長は至ってマイペースだった。
誰に聞かれるのかと柳生が詰め寄れば、先程公園で会った女性にだと部長は答える。
「…あれは、骨ですか?」
荷車に乗せられた白いモノ。遠目にしか分からなかったが、アレは骨だったのだろうか。黙って歩きながらも、そんな考えがずっとぐるぐると渦巻いていた。
「そうだと思うよ」
至っていつもと変わらぬ調子で、部長は肯定する。
「じゃあ、まさか、あの人って、」
「ねえ、それなんだけど!あの人、解剖で使った動物の骨を捨てに来てるって言ってたんだってば〜!」
俺は震える声で「証拠隠滅にでも来ていた?」と捻り出そうとして、勢いよく柳生に遮られる。これをずっと言いたかったのだと、隣の柳生は興奮気味だった。
分かってみればなんて事のない話。色んな偶然が重なって、心霊現象なんて起きたんだろう。
「そういや、なんで嘘の学部を言ったんすか?」
なんとなく、気になっていた事を質問する。
「それはね、ああいう場での基本だよ、人見クン」
待ってましたとばかりに俺の目を見て、ニヤリと微笑む。部長の眼鏡はまたしても怪しく光っていた。
部長が言うには、曰く付きの場所で、素性の知れぬ人に出会った時の常識だとか。そこまでするか…?と思ったのが言わずとも顔に出ていたのか、「犯人は現場に戻ると、よく言うだろう?」などと言ってのける。
それから、「犯人というのは、偶然居合わせ勘づいてしまった目撃者を消すもの」なのだとか。
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