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「よし、とりあえず、手分けして作品棚を当たろうか」
佐渡から保管庫の鍵を借りた古永部長が、その場にいるサークルメンバーに声を掛ける。
今日集まったのは、部長、柳生、神原、そして俺。浅井はあれから何かと啓くんを気に掛けているため本日も不在。佐渡は見ての通りアルバイト中だし、佐渡の彼女でサークルメンバーの花島さんこと花ちゃんも、同じくもうすぐ出勤して来るとのことだった。
カップルで同じバイト先とかお熱い限りだが、まあ、そんな冷やかしが出来ないくらいにはあの佐渡が花ちゃんを大事にしていた。俺らにはドSのサドなのに。
「はいはーい!そんで、何を探しに来たんでしたっけ?」
「もう、神原くんたら、チャット全然読んでないでしょ〜!」
せっかく説明したのに!と文句を言いながらも、柳生は説明するから今度はよく聞くようにと神原に念を押す。
その後ろには、鍵付きの保管庫の扉があった。ガチャリと鍵を挿しながら、柳生は俺たちの方を振り返る。その表情は、いやーな予感がしてしまうほど楽しげだった。
「呪いのビデオを探しに来たの」
一呼吸溜めてから、柳生はそう言った。説明としてはかなり端的だけれど、確かに、それ以上でもそれ以下でもない。
チャットを読んでいた俺は知っていたけれど、あらためて聞いても嫌だった。
「呪いのビデオ?」
「そう、OBが昔撮ったやつらしいんだけどね。それを観た人は、みんな突然辞めちゃうらしいのよ」
「昔流行った映画みたいな?そんなの本当に実在するのか?」
流石、ナチュラルに霊を信じていない神原という反応だ。俺だって、そんなビデオ本当にあるのか?と思うし、そもそもビデオであること自体がもう古くないか?とも思う。
だけどまあ、呪いのビデオと呼ばれるものがここには存在し、それによって被害を被っているのだという。だから、何でもやる映研である、うちのサークルにお声が掛かったのだった。
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