プロローグ

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――――本日の任務。  シュバル・キルガーネにて、夢見る魔女『カナリア・ベルベット』の討伐。  白い封筒に、封をしていた銀色の溶かした蝋の雫。 ㅤ普通ならばそこに何かの印が押されるはずだが、そこには何の印もなく、無機質な蝋の滴りがあるだけだ。  その中から取り出した、同じように白い紙に書かれた丁寧な文字を読み、少しだけ幼い面持ちを残した女性、シュガーレットは黒い手袋をしたままパチンと右手の指を鳴らす。  すると左手で持っていた封筒と手紙にボっと蒼い炎が灯り、灰にもならず消え去った。 「夢見る魔女って、なぁんの夢見てんのかね」  シュガーレットの肩に止まっている紺色のカラスのような鳥がどこか嘲笑うかのように言った。  その瞳は紺碧の色をしていて、シュガーレットの赤い髪色と対になっているように見える。 「さぁ。どうだろうな」  カラスがとまる肩とは反対の方へ首を曲げ、軽く音を鳴らした。  一本に結んでいる髪の毛がサラリと揺れ、背中を擽るも、真っ黒いスーツの上からでは何の感触も残さない。 「たとえそれがどれだけ幸せな夢であろうと、私たち『アダムの使い』に命令が下されたのだ」  シュガーレットは立ち上がり、街を見下ろす。  真夜中の時間だというのに、この大きなチャペルの屋根の下にはまだ馬車が走っていて、まさに華と言わんばかりのドレスをまとった貴婦人たちが、夫なのかそれとも愛人なのか分からない相手に手を引かれて歩いている。  なるほど。ここは確かに夢を見るにはうってつけの街なのかもしれない。  髪と同じく赤い瞳でそんな輝かしい光景を見つめながら、無表情で言い放った。 「ならば討伐する以外に選択肢はない」
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