3人が本棚に入れています
本棚に追加
「いい加減にしてくれよ!」
僕は柄にもなく大声を上げた。抑えがきかなかった。
今まで我慢していた分、一度あふれ出した感情は、もう止めようがなかった。
「いつもいつも! わけわかんない事して、授業妨害して! 意味わからないんだよ!
僕達は来年受験なんだぞ! 迷惑なんだよ!」
僕とバグ男以外誰もいない屋上。僕の怒りの声は空に拡散して、嫌になるくらい迫力がなかった。バグ男には、まるでそよ風のようにふわりと響いただろう。
だがバグ男は、驚いた表情で僕の顔を見つめていた。何も言い返して来なかった。笑いも踊りもしなかった。
僕は次の言葉を見失った。感情はあふれる程わき上がっているのに、糾弾すべき内容はそれだけだったのだ。
言いたい事、非難したい事はいっぱいあったはずなのに。あると思っていたのに。
僕は唇を震わせながら、言うべき言葉を探していた。
「そっか……。頭いい学校に行く人はもう準備してるよな。俺、頭悪いから気付かなかったよ」
バグ男はすまなそうにうなだれた。
僕はその素直な反応に驚いた。話の通じない奴だと思っていたのだ。どんな反応をされるのか、恐れてさえいたのに。
「布川君もさ、頭いい学校行って、やりたい事いっぱいあるよね。なのに邪魔しちゃってごめん」
バグ男の口調は神妙だった。
……僕のやりたい事?
その言葉が心に引っ掛かった。
バグ男の口からそんな言葉が出てくるとは思ってもみなかった。
そして……僕自身がそれを考えた事もなかったという事実に、今更のように驚いていた。
僕は何がやりたいんだろう。良い高校行って、良い大学行って、それで。
僕は一体、何がやりたいんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!