バグ男と僕の連立方程式

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「いい加減にしてくれよ!」  僕は柄にもなく大声を上げた。抑えがきかなかった。  今まで我慢していた分、一度あふれ出した感情は、もう止めようがなかった。 「いつもいつも! わけわかんない事して、授業妨害して! 意味わからないんだよ!  僕達は来年受験なんだぞ! 迷惑なんだよ!」  僕とバグ男以外誰もいない屋上。僕の怒りの声は空に拡散して、嫌になるくらい迫力がなかった。バグ男には、まるでそよ風のようにふわりと響いただろう。  だがバグ男は、驚いた表情で僕の顔を見つめていた。何も言い返して来なかった。笑いも踊りもしなかった。  僕は次の言葉を見失った。感情はあふれる程わき上がっているのに、糾弾すべき内容はそれだけだったのだ。  言いたい事、非難したい事はいっぱいあったはずなのに。あると思っていたのに。  僕は唇を震わせながら、言うべき言葉を探していた。 「そっか……。頭いい学校に行く人はもう準備してるよな。俺、頭悪いから気付かなかったよ」  バグ男はすまなそうにうなだれた。  僕はその素直な反応に驚いた。話の通じない奴だと思っていたのだ。どんな反応をされるのか、恐れてさえいたのに。 「布川(ぬのかわ)君もさ、頭いい学校行って、やりたい事いっぱいあるよね。なのに邪魔しちゃってごめん」  バグ男の口調は神妙だった。  ……僕のやりたい事?  その言葉が心に引っ掛かった。  バグ男の口からそんな言葉が出てくるとは思ってもみなかった。  そして……僕自身がそれを考えた事もなかったという事実に、今更のように驚いていた。  僕は何がやりたいんだろう。良い高校行って、良い大学行って、それで。  僕は一体、何がやりたいんだろう。
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