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僕も窓辺に立ち、空を見上げた。
と言っても、周りの家が邪魔して長方形に切り取られた空しか見えない。
それでもその長方形の中を雲が通り過ぎていく。
「あの雲はただ流れているだけだ。何時何分にどこそこへ行くように言われたわけじゃない」
「それくらいは分かるさ」
「そもそも人間以外に時間を気にする存在なんていやしない。そうだろう?」
「まあそうだろうね」
「つまり、生命を維持するためには必要ないんだ」
「でも人間には必要なんだよ」
「なぜだ?」
僕は再び腕時計を見た。
「デートの待ち合わせに遅れたら、何をせびられるか分からないから」
今はちょっとだけ不思議そうな表情をしたが、すぐにニヤリとした。
そして「そうだな。それは大事だ。まあ今は分からなくても、いつか分かればいいさ」と言ってまた空を見上げた。
「いつか……ね」
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